マーケティング戦略におけるUXの考え方を紹介
そもそもUX(ユーザーエクスペリエンス)とは
UXとは、User Experience(ユーザーエクスペリエンス)の略称で、ユーザーが商品やブランドに触れたときに得られる体験のことを指します。商品の印象や使いやすさ、ユーザーがブランドに触れたときの感情や思考すべてが含まれます。
UIは、User Interface(ユーザーインターフェース)、つまり目に見えるモノを指しますが、UXは目に見えないコトまで含めてデザインする領域です。
マーケティング戦略におけるUXについて
マーケティング戦略にてUXが必要になるのは、ユーザー視点での課題解決が目標となるときです。UXの考え方を用いた場合、ターゲットとなる「ヒト」の考えや行動を主軸に戦略を組んでいくことになります。逆にいうと、企業側の都合を最優先すべきシーンなどでは、必ずしもUXを考慮すべきとは限りません。
マーケティングにおけるUXの立ち位置
「ヒト」を主軸にマーケティングを実行していくと決定したら、一連の流れを通しUXデザイナーとしてプロジェクトを遂行していくことが求められます。その中でも、特に重要な役割を担うフェーズは下記の2点です。
①戦略の決定に必要な「ユーザーが抱える課題やインサイトの発掘」
今回売りたい商品・サービスについて、自分ではない人物が見た時にどんな魅力を感じるでしょうか?また、ヒトが物事に魅力を感じる背景には、何かしら悩みや課題感があるものですが、どんな課題感からその商品の魅力を感じる経緯に至ったのでしょうか?
その想像ができるだけ主観的にならないようにするために、UXの領域ではリサーチを行い、ターゲットに関するデータを収集します。そのデータから、ユーザーのインサイトや、商品に魅力を感じていただくまでのジャーニーマップを策定していきますが、そのフェーズがこちらに当たります。
②課題に対する「アプローチ手段の企画と制作」
上記①でジャーニーマップが完成したら、そのジャーニーの中の「どのタイミングで」「どのような手段で」「どのようなコンテンツで」ユーザーに接触していくべきなのかを検討するフェーズが発生します。発想力が問われるため、UXデザイナーのクリエイティブ力が試されるフェーズとなっています。
課題発掘のためのUX手法
ターゲットユーザーにとっての課題を発掘していくため、何らかの手段でユーザーの持つ「感覚」に接触したり、「行動」を観察・分析したりすることが求められます。
ユーザーリサーチ
ユーザーの感覚や思考を緻密に把握したい場合は、アンケートやインタビューで直接声を拾う手段があります。ここで気をつけなければならないのは、自分個人が求める回答に誘導してしまわないよう留意することです。できるだけ純粋なユーザーの感覚を拾うためにはどのような設計を行うべきかを考えることが、UXデザイナーの役割となります。リサーチの種類は、一例までに下記がありますが、様々なものが存在するので目的に合った手法を選択することも必要です。
・観察法
調査対象となるユーザーの行動や反応を観察することで、ユーザーにとって課題となっているであろうポイントを収集する方法。
・質問法
調査対象となるユーザーに対し、直接的に知りたいことに関する質問を行うことで情報を収集する方法。対面で行う場合と、オンライン上で行う場合がある。必ずしも口頭で会話をする必要はなく、アンケートなど文面でのやりとりもこちらに含まれる。
・ダイアリー法
調査対象となるユーザーに、実際の生活の中で自分の行動・感情の起伏・思考の流れに関するログを残してもらい、その情報を入手する方法。日記のように文章で残してもらう場合もあれば、写真を用いてフォトダイアリーを残してもらう場合もある。
データ分析
できるだけ多くのユーザーの動きを見たい場合には、下記のようなデータを集めて分析する方法もあります。Google Analyticsやヒートマップ、SEOツール等から取得できるデータです。
・ブラウザ上でどんなキーワードを検索をしているか?
・Webサイト上でどんな動きをしているか?
・SNS上でどのような発言や反応をしているか?
こちらはあくまでユーザーの感覚を推測するためのデータであって、マジョリティの動きの可視化でしかないということを念頭に置いておくとよいでしょう。
アプローチ手段の企画
ユーザーが抱える課題やインサイトが明らかになったら、そのユーザーに接触するための最適な手段や媒体は何なのかを検討したり、どのようなコンテンツを提供すべきかアイデアの発想を進めていきます。
目的やユーザーの状況に応じた手段の選定
目先の目的が認知の獲得なのかWebサイトへの流入・成約なのかによって、選ぶべき手段が大きく変わってきます。また、ターゲットとするユーザーの検討ファネルや特性に応じて、最適と考えられる接触シーンや媒体も変わってくるのです。ユーザーが目的の達成に向かって動く際に、最適な環境で情報をインプットする場面を想定することが重要になります。
接触するコンテンツの企画制作
選んだ接触手段を通じて、ユーザーに情報を与えるコンテンツの企画・設計も重要な要素の1つです。リサーチやデータ分析を通じて明らかになったユーザーインサイトに沿ってコンテンツを制作しましょう。手段として選んだ媒体の特性を考慮したコンテンツであることも必要です。
ユーザーの印象や記憶に残るコンテンツを企画するには、インサイトに沿うだけではなく、他社と差別化できるようなアイデアを発想することも重要となってきます。目指すゴールに向けて、下記のような発想法を用いていくのもよいでしょう。
・KJ法
ポストイットなどにアイデアを発散していき、発散したものをグルーピングしながら精査を行って、発想をまとめていく方法。発想にあたる制約が少ないため、突飛なアイデアが出やすいという特徴がある。
・マインドマップ
決められた1つの要素から、ロジカルに紐付けられるアイデアを発想していく方法。論理関係のつながったアイデアのみに厳選される特徴がある。
・シックスハット法
複数人で会話をしながら発想していく方法。参加者には6種類の決められたキャラクターを割り振り、そのキャラクターになりきって議論をすることで、様々な視点を集めることができるという特徴がある。
コンテンツの良し悪しの評価
企画したコンテンツの良し悪しを評価するのもユーザーとなります。例えば、Webサイトの形で制作したコンテンツであれば、ヒートマップを取得することでユーザーの興味が可視化されますし、CM等の認知用動画であれば、その動画によってどんな印象が醸成されたのか再度リサーチをしてみる方法があります。もしユーザーが設計した意図通りの動きをしていなければ、企画制作とリサーチを繰り返し、ユーザーの反応に合わせてコンテンツの最適化を図っていくとよいでしょう。
UXはビジネスの土台にあるという考え
このように「ヒト」を最も重要な存在と置いて戦略企画を行ったり、そのアウトプットの最適化を行うためにはUXの考え方が必要不可欠です。ビジネスを遂行する側も人ですから、完全に他者の考えや感覚になりきることは難しいですが、他者を中心にすべての発想や決定を行っていくという意識を持つことがベースになります。
UXとマーケティングは別物と考える?
UXの関与する領域はマーケティングだけではありません。商品を売るフェーズだけではなく、商品やサービスなど「プロダクト」そのものの開発や、「組織・経営」のデザインにおいても重要な役割を発揮します。
例えば、金銭的メリットを最重要視する組織ではなく「働くヒト」を中心に組織を作り経営を進めていくという方針であれば、ここでも社員というヒトを中心に物事の決定を進めていく必要性が現れ、UXの考え方が必要となってくるわけです。
仮に生産性の低い社員が複数名いる企業だった場合、その社員たちの困っていることや悩みを収集します。その悩みの発端がどこにあるのかを、対象ユーザーに警戒心や圧迫感を感じさせずにうまく引き出すのがUXデザイナーの仕事です。PCのスペックやオフィスの騒音など働く環境にあるのかもしれませんし、人間関係にあるのかもしれません。様々な可能性が考えられますが、それらに関する改善案の発想・実践・リサーチを繰り返すことで、生産性の低さを解決していきます。マーケティングのようにモノを売る作業ではありませんが、これも立派なデザインのうちの1つなのです。
UXデザイナーとは
UXデザイナーの役割は、下図の5段階を遂行することです。
ターゲットユーザーの意識を調査し具体化する力はもちろん、それを踏まえた要件定義を行いプロジェクトの方向性を企画・決定する力、またそれを視覚的に具現化していく力が求められます。
具現化するにあたって、PhotoshopやXDなどのデザインツールのスキルが必要になる場面もあるでしょう。またプロジェクトに関わるメンバーが、「ヒト」を中心に遂行するという同じ目的を持って進めるよう、リーダーシップを持って取りまとめる力も必要です。
マーケティング戦略の一部にUXの考え方が必要なときもあることを理解しよう!
マーケティング活動においてUXの考え方を取り込むと、ユーザー目線での戦略策定や情報発信が可能になります。UXデザイナーが求められる経験やスキルは多く、いきなり自力で取り込むのは難しい場合も多々あるため、まずはプロの手を借りながらターゲットユーザーにしっかりと刺さるコミュニケーションを作っていきましょう。
ポイントまとめ
- UXでアプローチ可能な範囲とは?
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ターゲットとなるユーザーの意識を調査し具体化すること、またそれを踏まえた戦略策定や要件定義を行い、視覚的デザインに具現化していくことが可能になります。マーケティングのみに留まらず、プロダクトの開発や組織づくりに関してもアプローチが可能です。
- マーケティングにおけるUX課題の発見方法とは?
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アンケートやインタビューを通したリサーチ、GoogleAnalyticsやヒートマップ等ツールを介して取得できるデータ分析を通して、ユーザーが抱える課題や意識を浮き彫りにしていきます。
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2016年株式会社セプテーニ入社。デザイナー・クリエイティブディレクターとして、広告バナー制作やLP制作を担当。トレンドを反映させたデザインの提案を得意とし、2018年にはクリエイター賞を受賞。その後、富士フイルムグループに入社し、WEBサイトリニューアルのアートディレクションや、CRO対策としてUI・UX改善にも従事。1000ページを超えるサイト制作のディレクション経験を持つ。