PSM分析とは?具体的な実施方法を徹底解説

PSM分析とは?具体的な実施方法を徹底解説

当記事では商品やサービスの適切な価格設定に欠かせないPSM分析について、概要や具体的な手法を解説します。ターゲットに適した価格設定は、利益確保に欠かせないポイントです。PSM分析への理解を深め、自社の利益確保や成長に役立てましょう。

目次

PSM分析とは

PSM分析とは「Price Sensitivity Meter(価格感度メーター)分析」の略称です。自社が狙うターゲットに対して「高い金額」「低い金額」などの質問を行い、商品やサービスの適正価格を導き出す手法です。適正価格がわからなければ、顧客の購買を促進できず売上が上がらない可能性もあるため、ぜひ実施したい分析といえます。

なお、PSM分析は「受容性調査」の一つです。受容性調査は「コンセプトテスト」とも呼ばれ、商品やサービスのコンセプトや価格を実際の顧客に問い、把握する調査です。その中の「価格受容性調査」にPSM分析は含まれます。

PSM分析と混同される機会が多い「CVM分析」は、具体的に「〇〇円だったらこの商品は購入しますか?」とクローズドクエスチョンで問いかけます。一方で、PSM分析は「いくらだと高い(安い)と感じますか?」と顧客自らに金額を回答してもらう手法です。

一般的に、商品やサービスの価格を決める際、企業目線では「できるだけ高く売って利益を出したい」と考えます。一方で、ターゲット(消費者)の多くは「できる限り良いものを価格を抑えて購入したい」と考えています。両者は求めるものが異なりますが、PSM分析を行うことで企業とターゲット両者の価格の落とし所を具体的に把握できるため、販売での価格設定がスムーズに行えるようになるでしょう。

PSM分析で把握できる 5つの価格

PSM分析では、5つの価格を把握してマーケティング活動に役立てます。下記はPSM分析でわかる価格と特徴です。

価格特徴
上限価格これ以上高いと購入しないと感じられる価格(上限)
妥協価格どうにか購入できると妥協できる価格
理想価格この値段なら買えると感じられる価格
下限価格これ以上安いとリスクがありそうなため購入を見送るであろう価格
許容可能価格帯上限価格から下限価格まで全体を表す。市場で受け入れられる見込みがある価格を指す

商品やサービスは顧客のことを考えると「安ければ安いほど良いのでは」と考える方もいるかもしれません。しかし、競合他社と比較してあまりにも価格が安い場合、ターゲットは品質に不安を感じ敬遠する可能性もあります。

「安いなら素材が悪いのかもしれない」「不良品が混じっている可能性が高いのかもしれない」とネガティブなイメージを抱かれると購入につながりません。購入してもらうチャンスを増やすために、適正価格の設定は重要だといえるでしょう。

なお、PSM分析は新製品の展開での実行はもちろん、既存の商品における適正価格を把握する際にも役立ちます。

PSM分析を活用する場面

ここからはPSM分析を活用できる2つの場面を紹介します。先に述べた通り、この分析は新商品の価格設定はもちろん、既存商品のリニューアルのタイミングでも活用可能です。

新製品の価格設定

PSM分析は新商品やサービスをリリースするタイミングでの活用がおすすめです。特に、自社ではじめて参入する商品の場合、アンケートで実際の声を聞くと価格設定での失敗を未然に防止できます。競合の価格調査とあわせてPSM分析も実施しましょう。

既存商品における価格の見直し

既存商品の売れ行きが悪かったり、キャンペーンを実施したりする節目のタイミングでもPSM分析は効果的です。
すでにリリース済みの商品やサービスが思ったように売れない場合、価格やターゲット設定などさまざまな要因が潜んでいます。PSM分析を実施すると、価格に関するターゲットと自社の齟齬に気付けるため、低迷する売上打破のきっかけになる可能性があるでしょう。

PSM分析を実施するメリット

ここからは企業がPSM分析を実施する4つのメリットを紹介します。

PSMはただターゲットに商品に関するイメージを聞くよりも、より精度が高いデータを得られる可能性があります。また、質問内容が簡潔であることから、企業とターゲット双方が負担を減らせるでしょう。

顧客視点での価格感を把握できる

PSM分析は実際の顧客となりうるターゲットを対象として調査を行います。そのため、顧客視点での価格感を企業が把握でき、売上確保につなげられるメリットがあるでしょう。企業は自社の利益を重視する必要があることから、どうしても価格感に主観が入り込んでしまいます。

しかし、実際にターゲットから「これくらいの金額が理想」「この金額は高い」と意見を聞くことで、市場との乖離を防ぐことが可能です。PSM分析は顧客の「値ごろ感」にあわせて、最適な価格での商品提供が叶うだけでなく、原価の見直しにも役立ちます。

アンケート調査よりも高い精度のデータを得られる

PSM分析は他のアンケート調査よりも設問が簡易的であるにもかかわらず、価格に関しては高い精度のデータを獲得できます。通常のアンケートでは価格よりも商品やサービスのイメージ、使用感などをヒアリングすることがほとんどで、価格について詳しく聞くことが稀です。しかし、PSM分析であれば、価格にフォーカスして調査を行えます

PSM分析は価格に関する設問のみであることから、回答者も抵抗感をおぼえることなく自分の価格に関する意見を回答可能です。

根拠ある価格設定ができる

PSM分析は実際の顧客から回答してもらう調査のため、価格に根拠を見いだせます。自社でのみ価格を設定した場合、市場調査や価格調査を行うものの顧客の考えはあまり反映されていない傾向です。しかし、PSM分析では顧客の意思をもとに自社で価格設定を行うという顧客を軸にした価格シミュレーションを行えます。

また、PSM分析を実施して商品やサービスをリリースした後に思うような販売成績を得られなかった場合も、ターゲットの分析を行うことで原因を特定できることから、改善も容易になる傾向があります。

調査の実施が容易である

PSM分析は4つのシンプルな設問を設けるだけで調査を開始できます。そのため、スピーディーな調査が可能です。アンケート調査を実施する場合、設問数が多かったり質問したい内容が複雑だったりすると、準備に工数がかかります。しかし、PSM分析の場合は後述する定められた設問に回答してもらうだけのため、担当者の負担を軽減して精度の高い回答を得られるでしょう。

PSM分析を実施する際の注意点

メリットが豊富なPSM分析ですが、実施前に確認しておきたい注意点もあります。

あくまで理論上の価格である

PSM分析で導き出される価格は、顧客の意思をもとにしたものです。そのため、自社の採算と設定する価格があわない可能性もあるでしょう。特に、まったく新しいサービスや相場が理解しづらいものは競合やおおよその価格を記載しなければ大きくブレる可能性があります。

販売結果は予測できない

PSM分析では商品やサービスの適正価格を把握できるものの、実際の販売結果が確実なものか「本当に売れるのか」については確実ではありません。あくまで「この価格であれば購入したい」「この価格であれば控えたい」という基準であるため、購入につなげるには別途販促が必要です。

ターゲットに対してPSM分析で価格を調査したうえで、適切な販促でアプローチすることが求められるでしょう。

質問方法に工夫が必要になる

PSM分析の設問は、一般的なアンケート調査と比較して内容が簡潔ではあるものの、質問方法については注意が必要です。

質問の仕方について、価格の印象を操作する不必要な情報を与えてしまったり、聞き方が誤っていたりすると返答が意図しないものになるでしょう。アンケートの実施は、アンケートサイトや各種ツールを使って容易に行えますが、実施前に質問方法や内容の精査が欠かせません。

調査するサンプルが偏らないように注意が必要

PSM調査だけでなく、多くの調査に共通することではありますが、調査するサンプルと実際に狙うターゲットの属性が乖離していると、望んだ調査結果を得られない可能性があります。たとえば、自社の狙うターゲットが主婦層にもかかわらずアンケートの回答者の属性が異なっていては、価格も正しい参考値を得られません。回答者を集める際は自社のターゲットに即した選定が重要です。

回答者の数ももちろん重要ですが、精度を高めるためには属性の精査も欠かせません。

価格の相場がない場合は目安を記載する

競合がいないまったく新しいサービスを展開する場合、ただ自由に金額を回答してもらうだけでなくおおよその価格を記載する方法も有効です。斬新な商品やサービス展開は独自性があり、自社の新たな価値を生み出すきっかけになり得ます。しかし、価格設定ができなければ、どれだけ革新的な商品やサービスであってもそもそも顧客の手に届かない可能性があります。

もしも競合で価格の相場が得られない場合は、自社で確保したい利益や原価などを鑑みたうえで、おおよその目安となる金額を設定し回答しやすい体制を整えましょう。

PSM分析の具体的な実施方法

ここからは実際にPSM分析を実施する具体的な方法を紹介します。PSM分析では大まかに、下記のステップで進めます。

  • アンケートの実施
  • アンケート結果の集計
  • アンケートの分析
  • 価格の設定

Excelやスプレッドシートを活用して関係者と情報を共有しながら進めていきましょう。

アンケート内容の検討とアンケート実施

まずはアンケートの実施に際して、質問内容を用意します。アンケートでは対象の商品やサービスの価格について、下記のように設問を設定します。

質問内容
Q1:この商品はどれくらいから高いと感じますか。
Q2:この商品はどれくらいから安いと感じますか。
Q3:この商品はどれくらいから高すぎて購入できないと感じますか。
Q4:この商品はどれくらいから安すぎて不安だと感じますか。

回答欄
それぞれ金額の回答は自由記入できるよう「____円」とシンプルな回答欄を設けます。

調査結果を集計する

まずはアンケート調査を行い、得られた結果をExcelにまとめます。上記のように実際に得られた金額を入力し、各数値が占めるパーセンテージを算出します(数値をアンケート実施人数で割って算出)。

集計した結果からグラフを作成

回答結果をまとめたあとは、Excelのグラフ機能を活用してグラフを作成していきます。なお、グラフは「折れ線グラフ」を選択し、横軸は価格、縦軸は各回答の割合に設定します。この結果、4つの線がそれぞれ交わるところが先ほど紹介した4つの価格です。そして、下限価格と上限価格の間が許容可能価格帯になります。

上記の結果から、自社のサービスや商品に適した価格設定を行いましょう。

グラフをもとに分析を行う

グラフが仕上がったら、次に分析を行い価格を決定していきます。なお、PSM分析は全体で実施するだけでなく、クラスタ(似たような母体)での実施も可能です。この場合はターゲットの特性でのグルーピングを行ったうえで、より精密な結果を取得できる可能性もあるでしょう。

■Lifunextの場合

Lifunextでは自社で独自の計算モデルをご用意し、各企業の売上最大化を目指せる販売金額の推計も行っております。実際に支援させていただきましたお客様には、取り扱う商品ごとにPSM分析を行い、「合理的な価格設定」「価格受容性MAXの価格設定」として価格をご提案いたしました。

まとめ:PSM分析で適切な価格設定を導こう

PSM分析は自社の商品やサービスの価格を適正化し、より多くのターゲットに アプローチするために役立ちます。どれだけ自社で顧客のニーズを最大限汲み取り、素晴らしい商品やサービスを用意していても価格が適切でなければ検討してもらえません。

これから新しい商品やサービスを展開する際、また既存のものの改善やリニューアルを実施する際はぜひPSM分析を実施したうえで、価格の決定を行いましょう。

なお、LifunextではPSM分析をはじめとした自社のマーケティング支援を包括してサポート可能です。これからサービスをリリースしようと考えるスタートアップ企業の方、自社の売上を最大化したい方などはぜひ一度ご相談ください。なお、PSM分析とあわせて確認したい価格調査の方法は下記の記事でご紹介しています。ぜひご覧ください。

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