PMFをスタートアップが重視すべき理由を解説!
PMF(Product Market Fit)とは、製品やサービスが市場で受け入れられる状態のことです。今回は、PMFの達成に必要なフェーズや、PMFの測定に必要な指標について解説します。スタートアップ企業の方は、ぜひ参考にしてください。
そもそもPMFとは?
PMF(Product Market Fit)とは、製品やサービスが市場のニーズに適合している状態のことです。通常、物を売るには「欲しい」と思う消費者がいなければなりません。事業の立ち上げに膨大なコストが必要なスタートアップ企業にとって、プロダクトの初速は重要な要素といえるでしょう。
早い段階からプロダクトが市場で売れるには、顧客のニーズに合致した製品やサービスを提供することが求められます。そのためにも、プロジェクトの段階でPMFを検証し、製品が市場で受け入れられるかを確認しなければなりません。
とくに、スタートアップ企業は資金や設備などリソースが限られているものです。事業が成功しなければ会社を維持するのも難しいため、PMFを検証せずに市場へ参画するのはリスクが高いといえます。現在のプロダクトに対する需要の高さを明確化してリスクを低減するためにも、PMFが重要といえるでしょう。
出典:METI Journal ONLINE「スタートアップ創出元年、「5か年計画」で政策をギアチェンジ」
PMFはスタートアップ・フィットジャーニーの一つ
PMFは、スタートアップ企業が成長し、市場で定着するためのフレームワーク「スタートアップ・フィットジャーニー」におけるプロセスの1つです。このフレームワークにはプロダクトの市場受容性を達成するまでに4つフェーズがあり、各プロセスを段階的に進めることで、フィットジャーニーが完遂されるものとされています。
ここでいう4つのフェーズとは、以下の通りです。
- CPF(Customer Problem Fit)
- PSF(Problem Solution Fit)
- SPF(Solution Product Fit)
- PMF(Product Market Fit)
上記の指標は、どれもスタートアップで成功する上で欠かせない要素です。それぞれのフェーズで何を定義すべきか、見ていきましょう。
フェーズ1.CPF
CPF(Customer Problem Fit)とは、プロダクトに対して顧客が抱えている課題が存在するのかを定義、検証するプロセスです。どれだけ魅力的に見える商品でもニーズがなければ売り上げは見込めません。そのため、スタートアップにあたってはプロダクトの需要を明確化し、市場に提供できる価値を見極めなければなりません。
また、顧客が抱える問題の強弱についても考慮する必要があります。例えば「バーニングニーズ」と呼ばれる喫緊の課題であれば、プロダクトに対して一定の需要があるとわかります。そのためCPFでは「課題が存在するか」「解決すべき課題か」といった要素を検証しなければなりません。
フェーズ2.PSF
次に進むのがPSF(Program Solution Fit)です。このフェーズでは、CPFで特定した顧客の問題に対して、具体的な解決策やプロダクトで解決できるかを検証します。このとき、分析やシミュレーションという形ではなく、想定する顧客の課題に対して、最小規格の製品を実際に提供してプロダクトと課題が合致するかを確かめましょう。
PSFの目標は、顧客が抱える問題を解決するためのソリューションを、実際に試作して検証することです。また、プロダクトに対して金銭的価値があるかも、本プロセスでチェックします。例えば、消費者自身で簡単に解決できる課題なら、事業として製品化する意味はありません。PSFは、プロダクトが市場で価値を示せるかを確認するフェーズともいえるでしょう。
フェーズ3.SPE
SPE(Solution Product Fit)は、プロダクトの具体的な製品化や実現の可能性を検証するフェーズです。どれだけ需要の高いプロダクトでも、法的な規制や技術力の面で製品化できなければ事業として展開できません。また、課題の解決に対してコストが高すぎても、購買は見込めないものです。
そのためこのフェーズでは、実際に市場へ出す前に、プロダクトが顧客に受け入れられるかどうかを検証します。法律・技術・製品コスト・セールスなど、さまざまな視点から製品を実用化できるかをチェックしましょう。
フェーズ4.PMF
PMF(Product Market Fit)を検証する上で、以下の3つの要素を満たすかを検証しなければなりません。
- 製品を顧客が買ってくれるか
- 製品の提供で高い満足度を維持できるか
- プロダクト自体が市場で浸透するポテンシャルを持っているか
詳細な検証方法については後述します。
スタートアップがPMFを重視すべき理由
PMFは、スタートアップが市場の進出で成功を収めるための重要な指標の1つです。こちらでは、その理由を3つの観点から説明します。
最短で利益を出す必要があるから
スタートアップは、限られた経営資金のなかで、早急に利益を出さなければなりません。PMFの達成は、市場における需要の高さを意味します。製品やサービスが消費者に受け入れられると、売り上げが急成長する可能性も高まるでしょう。逆にPMFを達成できなければ、市場進出後の維持コストで資金が尽きてしまい、事業の存続が危ぶまれてしまいます。
市場の把握で独自性を持った事業を展開できるから
スタートアップは、既存の市場において競争相手が少ないか、まったく存在しない領域に進出する傾向があります。そのため、市場調査を通じて、どのようなニーズがあるのか明確化することが不可欠です。PMFに至るまでのCPF・PSF・SPEのフェーズでは顧客の課題や需要の高さを検証できるため、アプローチの方向性を定められるでしょう。
差別化によりビジネスの安定を得られるから
PMFを達成することは、短期的な売り上げの向上だけでなく、長期的なビジネスの安定にもつながります。市場や顧客のニーズをしっかりと把握し、それに基づいた製品やサービスを提供することで、スタートアップは同一の市場のなかで独立したポジションを形成できるでしょう。
とくに、参入障壁の高い市場や技術的に再現が難しいプロダクトだと、類似したプロダクトの競合が出現する確率も低くなります。ビジネスのスピード感と柔軟な思考による差別化は、スタートアップならではの強みです。
スタートアップがPMFを実施するステップ
スタートアップが成功するためには、製品やサービスが市場に適合し、消費者に受け入れられることが不可欠です。そのためにも、企業はPMFの定義における指標をクリアして、プロダクトに対する期待度を検証しなければなりません。以下では、そのステップを解説します。
1.ターゲットの明確化
PMFを実現するための第一歩は、ターゲットの明確化です。市場にはさまざまな顧客層やニーズが存在しており、自社のプロダクトがどの層に影響しやすいのかを特定しなければなりません。そのため、市場分析や市場調査を実施し、どのセグメントに潜在的価値があるかを明確化しましょう。
ターゲットが違うだけでも消費者の受容性は変わるため、フィットジャーニーの情報も活用して適切なターゲティングを行いましょう。
2.「満たされていない」ニーズを把握
ターゲットが定まれば、次は顧客の「満たされていない」ニーズを把握する必要があります。顧客が何を求め、現在の市場ではどのようなニーズが満たされていないのかを調査しましょう。
このプロセスでは、顧客インタビューやアンケート調査といった手法を活用し、顧客が抱える課題や不満点を顕在化することが求められます。この情報を基に、製品やサービスが市場で競争優位を持つための差別化ポイントを見出し、製品の仕様を決定します。
3.MVPの決定
顧客のニーズを把握した後は、MVP(Minimum Viable Product)を開発します。MVPとは、最小限の機能を持つ製品やサービスのことです。MVPを試験的に市場へ投入することで、顧客から使用感や不満点を収集し、製品の仕様や改善点を洗い出します。
MVPの目的は「フィードバックの収集」です。完成品を市場に出すのではなく、欲しいデータを事前に定義した上で、そこに合わせて最小限の必要な機能をMVPに盛り込みます。ゲームのアーリーアクセスやクラウドファンディングのプレオーダーといった商品が代表的といえるでしょう。
MVPを市場に出すメリットは、製品の完全版を開発する前に、実際の市場の反応を確認して、必要に応じて製品の改良や方向性の見直しを行えるところです。検証プロセスを通じて、PMFの達成に役立てられます。
PMFの測定方法
PMFを達成したかを判断するには、適切な測定方法が必要です。ここでは、PMFの測定方法である定量的な指標と定性的な指標について、その具体例を解説します。
定量的な測定
数値化できる指標を用いることで、PMFの進捗状況を把握できます。このとき挙げられる主な指標は、以下の通りです。
リテンション率 | 顧客が製品やサービスを継続的に利用する割合。リテンション率が高いほど、製品が顧客に受け入れられていることを意味する。 |
NPS(Net Promoter Score) | 顧客が他者に製品やサービスを推奨する意向を測定する指標。NPSが高いほど、顧客が製品に満足し、他者に推奨しているとわかる。 |
CAC(Customer acquisition cost) | 顧客獲得コスト。広告出稿やイベントなど、獲得経路ごとの費用を単価として表す。LTVの指標と比較することで事業の健全性を判断できる。 |
LTV(Life Time Value) | 顧客生涯価値。製品の利用開始から得られる利益を表す。 |
CACとLTVを用いたビジネスの健全性を表す指標を「ユニットエコノミクス」と呼び、「LTV÷CAC」の計算結果が3以上であれば健全なビジネスといわれています。
定性的な測定
PMFにおいては、主に顧客のフィードバックや市場の反応、競争状況を指します。
顧客から直接得られる意見や感想は、製品の強みや改善点を知る上で重要な要素です。インタビューやアンケートを通じて、顧客が製品に対してどのように感じているのかを客観的に評価しましょう。
市場の反応と競争状況では、市場全体での製品の位置づけや競合他社との違いを把握できます。フレームワークを用いた市場分析や市場調査が効果的です。
PMF達成後に行うべきこと
PMFを達成する前と後では、スタートアップに求められる動きが異なります。ここでは、PMF達成後に取り組むべき重要な活動について見ていきましょう。
スケールアップの準備
PMFを達成したら、次に目指すべきは事業のスケールアップです。製品が市場で受け入れられ始めると、顧客の問い合わせ対応や人手不足が起こりやすいため、機会損失を防ぐためにも人員やオペレーションを強化する必要があります。
また、成長を一過性のものにしないためにも、マーケティングとセールスの拡大も欠かせません。これまでに蓄積した市場分析や市場調査のデータを基に、マーケティング戦略を展開し、さらなる顧客層へのアプローチを強化しましょう。
継続的な改善
PMFを達成した後でも、製品やサービスを常に進化させ続ける必要があります。市場や顧客のニーズは時間と共に変化するもので、とくに近年はトレンドのサイクルスピードも早くなっています。
顧客のフィードバックや市場動向を常に監視しなければ取り逃しが発生するかもしれないため、製品やサービスを継続的に改善していく仕組みの構築が必要です。競合に隙を突かれないためにも、競争力の維持にリソースを割きましょう。
LifunextのスタートアップへのPMF支援
Lifunextは、スタートアップのPMF達成を支援するサービスを提供しています。定性調査と定量調査を組み合わせたアプローチにより、自社商品を選んでもらう確率の向上や、サービスにおける期待値の推移を数値化可能です。
多くのスタートアップ企業では蓄積データが少ない分、定性的指標の達成のみを目指すパターンも珍しくありません。しかし、Lifunextでは豊富な実績によって培われた定量指標のデータを用いて、市場への早期浸透を目指せる信頼性の高いPMFを実現します。
まとめ:PMFはスタートアップの成長と成功の鍵
PMFの達成は、スタートアップが市場で成功を収めるための重要なステップです。CPF・PSF・SPEといった各フェーズを踏襲しながら、定量的・定性的な指標でPMFを測定しましょう。
達成後にはスケールアップや継続的な改善を進めることで、持続的な成長も期待できます。データ不足で定量的指標の達成が困難な場合は、Lifunextの支援がおすすめです。定量的指標・定性的指標の両面でPMFの達成をサポートします。
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新規事業開発・マーケティング戦略・ブランディング戦略やPR施策などをご支援しています。
Lifunextのチームは、統計学・データ分析を軸にした「ストラテジック」、認知心理学・デザイン思考を軸にした「コミュニケーションデザイン」の2軸でアプローチします。
PMF検証、コミュニケーション戦略設計などを実施されたい際は、お気軽にお問い合せください。
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専業代理店のSepteniを経て、統計分析ソリューションベンダーXicaに入社。プロダクト開発の初期段階から関わり、営業戦略や組織構築も担当。2017年から電通でデジタルマーケティングと戦略設計に従事。2021年よりアクセンチュアのマネージャーとして企業の事業戦略やプロセス改善に携わり、顧客スコアリングシステムの構築を通じて21億円の純増収益を見込むプロジェクトを完遂。現在はLifunextでマーケティングと組織、プロセスのコンサルティングに取り組んでいる。